【はちみつ文庫】 猫と執事とご主人様っ! 【大富豪、にゃんこと風呂に入る:前編】
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猫と執事とご主人様っ! 【大富豪、にゃんこと風呂に入る:前編】

ルシガ・ローランド・アルフレッド・デュフォール。
この長たらしい名前を持つのは、名家に生まれ、その後自分の力で世界の大富豪実業家となった、精悍な美貌の男だ。

切れ長の鋭い瞳は、彼の人柄をそのものを物語っている。
知性と教養、そして溢れるような自信、それらが強い輝きとなり、濃紺の瞳の奧から放たれていた。

彼は、男が望む全てを持っていた。
地位、財産、権力、名誉、そして若さ。
男達は彼の力の前にひれ伏し、女達は振り向かせるのに血の道を上げる。
彼の妻にさえなれば、ロマンス小説さながらの生活が出来る――そう考える女達が、まるでハイエナのように彼の回りにひしめいていた。

しかし、ビジネスに対して冷酷であると同様に、女を使い捨てるように変えていく彼には、愛情などどうでもよかった。
愛などという行き先の知れたものよりも、仕事を拡張し、自分の力を示すことの方が彼にとっての情熱の対象なのだ。

……そう、昨日までは。




彼はその切れ長の目を細めて、ソーセージに夢中でかぶりつく少年を見いっていた。
プライベート用のダイニングルームには、八人掛けのテーブルが置かれており、二人はその両端に座っている。
少年の名はアレックス。
それは記憶を失った拾いものに、昨夜彼がつけた名前だ。
窓から入る朝日を浴びて、アレックスの髪は金色に輝いていた。
雪のように白い肌、ほんのりと桃色に染まった頬、桜の花びらのような唇を持つ少年は、まるで小さな天使のようだった。

――う~ん、男なのか……。

彼の好みは一貫して、成熟した、いわゆるいい女だ。
少女に興味がないどころか、十八、九歳の娘にうつつを抜かす男達を「変態ジジイ」と言ってはばからなかった。
それだけに、十二、三歳の幼い子供に、一時的であれ興味を持ったことすら、彼は認めたくなかった。
そんな子供に惹かれるのは小児性愛者で、自分ともっともかけ離れた場所に住む人間達だと思っていたのだ。
それだけに男であること知り、ほっとしたのも事実だ。
しかしそれ以上に、残念だった。
その証拠に彼は心の中で、何度も同じ言葉を繰り返している。

アレックスは食事を終えると、顔を上げ、彼に向かって言った。

「ごちそうさまなの」

南の海を思わせる美しいブルーの瞳が、朝日に透けている。
食事中は後ろに下がっていた耳がピンと立ち、頬には食べかすがついていた。
名残惜しそうに空になった皿を見つめているアレックスを見て、彼は言った。

「まだ食うか?」
「うんと……」

アレックスは腹に手を置き、小首を傾げている。
そして残念そうに答えた。

「おなかがいっぱいなの」

食べたい気持ちはあるのに、胃袋には空きがないらしい。
子供らしいしぐさに、彼は声を立てて笑った。

「おかしいの?」

不思議そうに訊ねるアレックスの耳が、ぴくぴくと動いた。

「いや、なんでもない。疲れただろう? もうひと眠りするといい。いや、その前に風呂に入った方がいいな」
「おふろ……きらい」

アレックスの耳が一気に後ろに下がる。
くるくる変わる表情と同じで、アレックスの耳は雄弁だ。
もしも隣に座っていたいたなら、彼は間違いなくアレックスを抱きしめていただろう。
席が離れていたのは、彼にとって良いことだった。

「汚れたままで寝るわけにはいかんだろう? おい、風呂を用意してやってくれ」

そう執事に命じる彼に、アレックスは言う。

「おふろには、はいらないの」

口をへの字に曲げ、アレックスはぎゅっと彼を睨んでいる。
いや、睨んでいるように見えるくらい強い意思表示をしているのだが、いかんせん顔が可愛すぎた。

――猫は水を嫌うというからなぁ。

普段の彼なら、我が儘を言う子供など、一喝で黙らせるだろう。
しかしアレックスの我が儘は、子猫が親猫にじゃれて甘噛みをするように可愛い。
彼はアレックスに問いかけた。

「アレックス、昼ご飯は何がいいか?」
「?」
「なんでも好きな物を食べさせてやるぞ」
「あいすくりーむと、ソーセージ! あいすくりーむには、いちごのソースをかけるの!」

目と小さな牙を輝かせて、アレックスが答えた。

「よし、食べさせてやるぞ。そのかわり、風呂に入るよな?」
「……いちごのソース、かける?」
「ああ、かけるとも。いぱいかけてやる」
「いちごのーソース。い~っぱい……」

今にもよだれを垂らしそうな顔だが、それでも躊躇しているようだ。

「執事……いや、このおじさんが世話をしてくれるから、一緒にバスルームへ行きなさい」

彼が指した銀髪の執事を、アレックスはじっと見つめた。
次第に眉根が寄り、頭を振る。

「いやなの」
「いっぱいイチゴのソースのかかったアイスが、食べられないぞ?」

アレックスは斜め上を見て、何かを考えると、意を決したように口を開いた。

「……でも、ソーセージさんだったらいいの」
「へっ?」
「ソーセージさんとなら、おふろにはいるの」

一瞬、彼の思考が固まった。
なぜか、心臓がドクドクと鼓動するのを感じる。

――落ち着け。ええっと、アレックスは男だよな? だったら俺が風呂に入れてもいいんじゃないか? うんそうだ。おかしくない。何もおかしくないぞ!

彼は鼻息荒く振り返ると、執事に言った。

「風呂の用意をしろ。私が入れる」
「……ご主人様。……お顔が赤いですよ」
「うるさい、気のせいだ!」

しかし己の顔の熱さは、彼自身が一番よく知っていた。




マンションのバスルームは、洗練された大人の雰囲気が漂っていた。
黒を基調に、大理石と繊細な金細工を使い、豪華かつモダンに装飾されている。
一般人なら暮らすことができそうな広さのバスルームでは、夜になり下ろされたブラインドを上げれば、見事な夜景も見ることができた。
丸いジャグジーの奧には、硝子張りのシャワールームがあり、ジャグジーを取り囲むのは水槽でできた六本の柱だ。
水槽中には、色とりどりの魚とクラゲが揺らめいていた。

先に入った彼は、ワイシャツとズボンをたくし上げ、少年が来るのを待っていた。
カチャリと音がして、アレックスが扉の隙間から顔を覗かせる。
耳を後ろに下げ、眉を八の字にし、上目遣いで彼を見ていた。
できれば許して欲しいと言いたげな表情だが、汚れたままにしておくことは出来なかった。

「早く入っておいで」

彼の言葉に、アレックスは渋々浴室に入ってきた。
可哀想な尾はだらりと下がっていたが――それよりも目を引くのはその肌の美しさだった。
初雪のようになめらかな白い肌と、細っそりとした体つきとあいまって、繊細な硝子細工のようだ。
数々の美しい女性の裸体を見てきた彼だが、アレックスはそれらとは全く違うものだった。
天使のような清らかさは、年齢の違いだけではないだろう。

――うん、ついてる。ついてるぞ。アレックスは男なんだ。おちつけ、俺。

彼はアレックスの申し訳程度にちょこんとついたピンク色の物を見て、彼は自分に言い聞かせた。
歩くたびにピンクの物をピコピコと揺らしながら、少年が入ってきた。
隣に立ったアレックスの身長は、彼の肩よりも十cmは低い。
小さく華奢なその躰は、まるで真っ白な子猫のようだ。

「湯船につかりなさい。それから躰を洗うから」

観念したアレックスは、湯に脚をつけた。
その瞬間、叫び声を上げる。

「きゃぁぁぁぁーっ!」
「どうした?」
「あついの」
「ん? 熱くなんかないぞ」
「あつ~いの」

湯船に手を浸してもう一度確認しても、温度は丁度良い。
しかしアレックスにとっては熱いようなので、彼は水で 温度を下げた。
生ぬるくなったところで再び入るように促したが、よほど熱い思いをしたのか、アレクスは疑い深い眼差しで渋っている。

「さぁ、入りなさい」
「いっしょ」
「へっ?」

アレックスは彼のシャツを握り、真っ直ぐな眼差しで見つめていた。

「ソーセージさんも、いっしょ。ね?」
「えええ~っ!?」

――いやいやいやいや、それはまずいだろう!

この国では近年、児童の性的虐待が蔓延している。
今では、幼児を下着一枚で庭に出しただけでも、警察に通報されるのだ。
母親ですら乳児と一緒に風呂に入ったりはしない――そんなお国柄で、赤の他人の少年と入浴など、言語道断だった。

「いかん。風呂は一人ではいるものだ」
「……こわいの~」

アレックスは、繰りシャツを返し引っ張ってくる。
他の子供が甘えてなどしたら、跳び蹴りをくらわすところだが、不思議なことにアレックスのそれは、鼻の下が伸びるほど可愛く感じる。
今にも泣きそうな顔をみると、持ち合わせてないはずの庇護欲が彼の中に沸いてきた。
少年の猫耳は、後ろにぐっと下がっている。
不安だったり、嫌なときは、どうやらこの耳は下がるらしい。

――ん? 耳?

その時、彼に一つの考えが浮かんだ。

――耳があるってことは猫だよな? 猫と風呂に入って、いかんと言うことはないぞ。 そうだ、アレックスは人間ではなく、猫なんだ。そう言えば、俺も風呂に入ってないじゃないか。一緒にはいれば一回で終わる。うん、これは決してやましいことじゃないぞ!

考え出すと、だんだんそれが正しいように思えてきた。
しかし言い訳のために思考を張り巡らすこと自体が、すでにやましいことには気づいていない。

「よ~し、アレックス、風呂に入るぞ!」

彼はワイシャツのボタンに手を掛けた。

こうしてルシガ・ローランド・アルフレッド・デュフォールは、禁断の世界へと足を踏み出してしまったのである。


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Date:2013/08/10
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